ESSAYかぐらびと

本場インドカレーの「カレーパン」と「スパイスチャイ」のお店 |Spicier

2025.01.24

父親の仕事の関係で幼い頃から海外に興味を持ち、多様な文化への関心を抱き続けてきたオーナー・菅原さん。
コロナ禍をきっかけに辿り着いたのは、「スパイス」と「カレー」という奥深い世界でした。
異文化と食の架け橋として誕生したこのお店が、どのようにしてはじまり、どのような思いで運営なされているのか、お話を伺いました。

Spicier オーナー
菅原 友希 Sugawara Yuki

イギリス生まれ。大学では文化人類学を専攻し、多様な文化や価値観への理解を深める。在学中にはスウェーデンへ留学し、異文化の中での生活を通して柔軟な視野を培う。卒業後はメーカーの海外営業部に勤務し、仕事やプライベートを通じて60カ国以上を訪問。コロナ禍にスパイスの魅力を深く学んだことをきっかけに、神楽坂にスパイスとチャイの専門店「Spicier」をオープン。


オーナー 菅原友希さんのヒストリー

これまでのご経歴について、幼少期からお伺いしてもよろしいですか?
「父の仕事の関係でイギリスで生まれたのをきっかけに、海外の文化に興味を持ち、大学に入るまでは新興国に携わる国際機関で働きたいと思っていました。大学で文化人類学と出会ったのをきっかけに、経済的な開発よりも現地の文化や暮らしに興味を持つようになりました。 」
そこから新興国に行かれるようになられた?
「いえ、海外留学はスウェーデンでした。新興国への思いもあったのですが、両親の希望をくみ取りまして。スウェーデンは移民が多い国で、いろんなルーツの方が暮らしています。私のホストファミリーもボリビアとペルー出身の方々でした。 彼らとの生活を通じて、スウェーデンの文化だけでなく、多様な文化背景が交わる環境だからこその貴重な経験を積むことができました。卒業後はメーカーの海外営業部で働き、コロナ前には仕事やプライベートで60カ国以上を訪れました。」

『カレーの学校』に背中を押された

開店のきっかけをお教えください。
「自分で何かをはじめたいという気持ちはずっとありましたが、子どもがまだ小さかったこともあり、“もう少し落ち着いてからだろうな” と思っていました。そんな中、コロナ禍で海外に行けなくなり、ぽっかり時間ができてしまって。この機会に何か勉強したいと思ったときに、水野仁輔さんの『カレーの学校』と出会ったんです。最初は起業までは考えていませんでした。でも、水野さんのお話に触れているうちにチャレンジしたくなって。スパイスとかカレーで何かできないかなと考えていたら、友人が"インドの父のような人が東京にいるよ"って、西葛西インド人会会長のチャンドラニさんのことを教えてくれました。で、会いに行ったんです。」
チーフカレー・オフィサーのチャンドラニさんとパチリ。
すごいバイタリティですね!
「ありがとうございます。チャンドラニさんとお話しする中で、インドカレーを手軽に楽しめる形は、やはりカレーパンだろうとなりまして。本場のインドカレーを包んだカレーパンをあまり見かけなかったことも決め手のひとつでした。そこからオープンに向けて動き出しました。」
開店までにご苦労はございましたか?
「いろいろあった気もしますが、すぐに忘れちゃうほうなんです! でも、工事が遅れてプレオープンの直前まで入口の扉もスパイス棚も設置されていなかった時は、さすがにハラハラしました (笑)。」
工事は間に合ったんですか?!
「なんとか夜中に工事が終わって、そこからカレーパンとかチャイを徹夜で作りプレオープンにこぎつけました!」

フレッシュなスパイスの香りを届けたい

タピオカ粉を使ったカレーパンは珍しいですね。
「最初は普通のパンとタピオカパンの2種類をシェアキッチンで販売していたんです。そこで多くのお客様から“もちもち食感が美味しくて、普通のカレーパンよりもさっぱりしている!”と大変好評をいただきまして、タピオカパンに一本化しました。フィリングにはインド人シェフが作る本場のカレーを使用しているのですが、香り豊かなスパイスに皆さん驚かれます。」
 
どんな種類のカレーパンがあるのですか?
「『もちもちキーマ』は鶏ひき肉と玉ねぎ、トマトなどシンプルな材料とたっぷりのスパイスで作った、とろとろジューシーでスパイシーなキーマカレーがぎっしり詰まっています。 」
もちもちキーマ
「ほかには期間限定で『ほうれん草カッテージチーズ』や『ひよこ豆のカレーパン』などをご用意しています。」
ほうれん草カッテージチーズ
編集部でも「もちもちキーマ」と「ほうれん草カッテージチーズ」を試食。食べた瞬間に「おお~!」という声が上がったほどのスパイス感だ。
「チャイは淹れ方やスパイスの組み合わせで、驚くほど味が変わります。牛乳とシロップを混ぜるタイプのチャイを出されるカフェさんも多いのですが、『Spicier』ではスパイスをしっかり感じていただきたくて、牛乳から煮出しています。」
チャイの飲み比べセット

神楽坂との不思議な縁

芸者新道にお店を出そうと思われたきっかけは?
「東京でいろいろ物件を探している中で、こちらを紹介されました。実は以前、神楽坂にある会社で働いていたことがあるんです。その頃から“いい街だなぁ”と思いながら通っていたので、神楽坂にはとても親しみを感じています。そういえば、チャンドラニさんが日本に来て最初に住んだまちも神楽坂だったんですよ。」
どちらに住まれていたのですか?
「毘沙門さまの裏って聞いています。"自分以外、住んでいた人が全員芸者さんだったんだよ"って教えてくださいました。」
これからの展望について教えてください。
「もっといろんなスパイスの魅力をお客様に体験してもらいたいなって思っています。いまもイベントやマルシェに出店したり、あとはチャイをカフェさんに卸したりしています。同じチャイでも、お店ごとの淹れ方とか提供の仕方で全然違った味わいになるんですよ。それがすごく面白くて!」
お店ごとの工夫があるんですね。
「そうなんです。お店のスタイルや工夫で、同じスパイスティーでもいろんな表情が出てくるんですよね。そういうのも楽しいなって思いますし、スパイスの奥深さを感じてもらえるきっかけになるかなって。」
簡単にスパイシーなチャイを楽しめるキットを販売中。
最近は「スパイスおやつ」も始めたとか?
「はい。今月から火曜日限定で。もともとパンの販売は不定期でやってたんですけど、もっとしっかり取り組みたくて。スパイスを使ったおやつって、まだまだ可能性がたくさんあると思うので、そういう楽しさもどんどん伝えていきたいと思っています。」

菅原さんは今も定期的に海外のスパイス農園に足を運び、生産者と直接対話を重ねているという。
スパイスハンター菅原さんが世界中から厳選したスパイスを、ぜひ味わってほしい。
 

今回、取材にご協力いただいたのはオーナーの菅原さん。
お店で会えたら「かぐらびと見ましたよ!」ってひと言、頼むな!

店舗情報

店名
Spicier(スパイシア)
住所
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂3-2-33 芸者新道 Rosy
営業時間
11:30 - 17:30(金・土は18:30まで/店内L.O.は30分前迄)
定休日
月曜日・火曜日(年末年始など大型連休は不定期)
駐車場
公式SNS
  • ig
  • tt
 

この記事を書いた人

かぐらむら編集局

隠れた名店や話題の最新スポットを実際に訪れ、取材しています。神楽坂を知り尽くした編集局ならではの視点で、皆さまに新たな発見をお届けします!

RANKINGかぐらびと