ESSAYかぐらびと

東京初!本格ジョージア料理&ワインバー|AJIKA

2025.11.26

「このチーズを味わえるのは、日本でただ一店、『AJIKA』だけ。ジョージア伝統のチーズを日本で再現しました。」

古代からワイン造りが続く南コーカサス地方の国、ジョージア。
かつてはグルジアと呼ばれていましたが、日本では2015年に現在の呼称へと改められました。相撲ファンには、元力士・栃ノ心の出身国としてもおなじみの親日国です。

ヨーロッパとアジアの文化が交わる場所にあるジョージアは、香辛料がほどよく香り、乳製品やナッツをふんだんに使う独自の料理で知られます。その味わいはどこか懐かしく、けれども新鮮なもの。

そんなジョージアの空気をまるごと体験できる、東京初の本格ジョージアレストラン「AJIKA(アジカ)」が2025年9月、神楽坂に誕生しました。

第28回「かぐらびと」では、共同創設者兼CEOの真下 博志さんにお話を伺います。 

AJIKA(アジカ) 共同創設者兼CEO
真下 博志  Mashimo Hiroshi

世界10か国で14社を経営し、電子機器、医療機器、ICTなど、多様な分野で、国や地域の特性に応じた事業を展開している。経営者として、各国の人々が自らの力を最大限に発揮できる環境づくりを重視し、特にアフリカ地域では現地の雇用創出に力を注ぎ、約1万5,000人を擁する規模へと成長させている。

日本ジョージア商工会議所 専務理事/日本ベナン友好会 事務局長


半導体から食の世界へ -異分野をつなぐまなざし-

真下さんとジョージアとの関わりは、どこからはじまったのですか?
「最初のきっかけは、本当に偶然でした。私の本業は半導体関連の事業で、長年にわたり海外を中心にビジネスを展開しております。そのご縁から、現駐日ジョージア大使より“日本とジョージアの企業をつなぐ商工会議所を設立してほしい”とご相談をいただいたことが、私とジョージアを結びつける最初の契機となりました。2020年にボランティアのような形で活動を開始。3年前には経済産業省の認可を受け、正式に日本ジョージア商工会議所としての運営をスタートしました。」 
ジョージアの首都トビリシ旧市街。石畳の坂道の先に、歴史を見守るナリカラ要塞がそびえる。(AC写真)
そこからレストランの話に発展したのですね。
「はい。商工会の活動を通じて多くのジョージアの方々と関わる中で、“東京には、ジョージア料理を本格的に提供するお店がない”という話が持ち上がりました。それならば、私たちが知っていただくための“入口”をつくろう、そう考えて立ち上げたのが、この『AJIKA』です。」 
画家のニコ・ピロスマニや、その逸話を歌った『百万本のバラ』(日本語版の歌唱は加藤登紀子)などは日本でも広く知られていますが、それらとジョージアがまだ結びついていないのかもしれませんね。
ニコ・ピロスマニが描いた『女優マルガリータ』(パブリックドメイン)。
この逸話は、楽曲『百万本のバラ』の題材として知られている。
話を戻しまして、ご自身が本業ではない“飲食店”という形で文化を伝えようと思われた理由をお聞かせください。
「飲食店は『AJIKA』が初ではなく、南青山でアフリカのベナン共和国のメンバーと料理店『 Golden Grand Grill Aoyama 』を立ち上げた経験もありまして。」 
5か国の駐日大使が『Golden Grand Grill Aoyama』に来店。国際交流のひとときを記念して。
ジョージアのように、何かに関わられての結果なのですか?
「ええ。実は日本ベナン友好会の事務局長も務めているんです。メンバーの一人から“ベナン料理を日本の方々にも味わってもらいたい”というお話を伺い、その想いを形にいたしました。私自身は料理人ではありませんが、各国の方々が自らの文化に誇りを持ち、魅力を伝える場所を日本につくることは、民間レベルの相互理解を促進するうえでも非常に意義のあることだと考えています。今回のジョージアも同様で、自国の文化を正しく伝えたいという想いに共感し、共にお店をつくることを決めました。」 

好奇心がパスポート -神楽坂で出会う本場の味-

東京ではじめてのジョージア料理店。なぜ神楽坂を選ばれたのですか?
「ジョージア出身の共同創設者のN氏は、かつて神楽坂に住んだことがあり、ご家族との思い出が数多く残る場所だったことから、“もし東京でお店を開くのであれば、神楽坂しかない”と勧めてくれました。その言葉を聞いたとき、私自身も納得したのを覚えています。神楽坂には古き良き日本の風情が残っていて、人との距離も近い。どこかジョージアにも通じる温かさがあり、だからこそ、この場所でなら“古代から続くジョージアの文化が自然に溶け込む空間”をつくれる――そう感じました。」 
内装もジョージアを意識なされているのですか?
「はい。設計は建築家でもあるN氏が担当しました。コンセプトはジョージアにいるような空間。店内のインテリアから小物ひとつひとつまで物語があります。」
『AJIKA』とは不思議な響きですね。
「ジョージア料理で広く使われている調味料のひとつです。アジカは唐辛子をベースに、複数のスパイスを調合して生まれる複雑で豊かな香りと味が特徴で、ジョージアの食文化には欠かせません。日本語の味という響きにも通じることから、“味を架け橋に”という思いを込めて付けました。」
 

チーズ、スパイス、そしてワイン -シルクロードを旅する-

おすすめのメニューを教えてください。
「まずご紹介したいのが、昼限定の『クラッシック・ハチャプリ』などです。パン生地の上にたっぷりのチーズをのせて焼き上げる、ジョージアを代表する国民食のひとつ。味の要となるのが、日本企業3社と共同開発した特製チーズです。発酵環境や保存条件を考慮すると、ジョージアからチーズを空輸するのは現実的に難しい。そこで日本のチーズメーカーの協力を得て、イメルリをもとに何度も試作を重ねながら、本場の風味をできる限り再現しました。最終的に、ジョージアの方には懐かしく、日本の方には新鮮でありながらも親しみやすい味わいに仕上げています。おかげさまで“濃厚でありながら後味は軽やかですね。チーズのミルク感と卵のまろやかさ、パンとバターの香ばしさが絶妙に調和している!”とご好評をいただいております。このハチャプリは、ジョージアの伝統と日本の技術が融合して生まれた、まさに『AJIKA』ならではの一品です。」 
シュクメルリ・アチャルリ・ハチャプリセット/1,900円(税込)
シュクメルリといえば、松屋のオリンピックメニューで話題となり、第3回復刻メニュー総選挙で1位を獲得した「シュクメルリ鍋定食」でも知られる。
クラッシック・アチャルリ・ハチャプリセット/1,900円(税込)、卵黄とバターがのっている。
「続いてご紹介したいのが、夜限定の『ヒンカリ』です。スパイスが香るジョージア風の小籠包といえる料理で、中には濃厚な肉汁がたっぷりと詰まっています。手で持って一口で頬張るのが現地流の食べ方。日本ではまだ珍しい『ヒンカリ』ですが、独特の風味と食感が人気を集め、夜の時間帯には多くのお客様からご注文をいただいています。メニュー開発はすべて、もう一人のジョージア出身の共同創業者のアブラゼ氏が中心となって手がけています。」
ヒンカリ
ワインはすべてジョージア産とお聞きしてますが。
「はい。スパークリングを含め、すべてジョージア産です。ジョージアは“ワイン発祥の地”ともいわれ、約8,000年前から続く伝統的な製法でワインづくりを行っています。」 
ジョージアのぶどう畑(AC写真)
「クヴェヴリ(素焼きの甕)を首だけ出して地中に埋め、ブドウを皮ごと入れて発酵させる手法は、世界最古のワイン醸造法ともいわれるもの。この製法で生まれる黄金色のアンバーワインは、深みのある味わいと豊かな香りが特徴です。」 
店内に置かれたクヴェヴリは、本国ジョージアから運んだという150〜200年前のもの。
クヴェヴリを用いた伝統のワインづくりは、2013年、和食とともにユネスコ無形文化遺産に登録。
「近年ではステンレス製タンクによる近代的な生産も増えていますが、クヴェヴリ製法を守り続けるワイナリーも多く、その伝統が今もジョージアのワイン文化の核を成しています。ちなみに『AJIKA』では、元大関・栃ノ心さんのご実家で造られたワインも取り扱っているんですよ。」 

ひらかれた扉の先に -新しい出会いをつむぐ-

ホールスタッフは外国の方もいらっしゃる?
「はい。ジョージアからの留学生も在籍しています。日本で学ぶ傍ら、接客や言葉を通じて相互理解を深める場にしたいと考えています。だからこそ、ご家族にも安心して送り出していただけるよう、勤務環境づくりには特に配慮しています。」
より深い文化交流もできそうですね。
「文化の違いを越えて、お客さまとの交流を大切にしていきたいと考えています。ただ、ホールスタッフは現在、日本語を学習中で、現状では英語でのご案内が中心となります。オープン直後ということもあり、サービス面を含めまだ行き届かない点もありますが、ご指摘やご意見は真摯に受け止め、改善に努めながら、より良い店づくりにつなげてまいります。」 
今後の展望をお聞かせください。
「いまはまだメニューの品数は多くありませんが、ジョージアの食文化をより多面的に楽しんでいただけるよう、デザートを含む新しい料理を順次増やしていく予定です。  そして、料理だけでなくジョージア文化そのものを発信する場にできたらと。ジョージア語講座やワイン会、ダンスイベントなど、“食のその先にある文化交流”を体験していただく企画も考えています。」 
東西文明が交差するジョージアと、和と洋が共存する神楽坂。
異なる文化が溶け合う風景には、どこか響き合うものがある気がします。
ジョージアという国を“味”から知る――その扉が、いま神楽坂に開かれています。 

今回、取材にご協力いただいたのは共同創設者兼CEOの真下さんと、神楽坂店のみなさま。
お店で会えたら「かぐらびと見ましたよ!」ってひと言、頼むな!

店舗情報

店名
AJIKA Georgian Bistro and Wine Bar
住所
〒162-0828 東京都新宿区袋町3-6 神楽坂センタービル ANNEX1階
営業時間
[月・火・木・祝前日]
11:30 - 14:30 (L.O. 14:00)
17:30 - 22:30 (L.O. 料理21:00 ドリンク22:00)
[金・祝後日]
11:30 - 14:30 (L.O. 14:00)
17:30 - 22:30 (L.O. 料理21:30 ドリンク22:00)
[土・日・祝日]
11:30 - 15:00 (L.O. 14:30)
17:30 - 22:30 (L.O. 料理21:30 ドリンク22:00)
定休日
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この記事を書いた人

かぐらむら編集局

隠れた名店や話題の最新スポットを実際に訪れ、取材しています。神楽坂を知り尽くした編集局ならではの視点で、皆さまに新たな発見をお届けします!

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