ESSAYかぐらびと

【開店】濃厚ミルク感のある、ご褒美チーズケーキ | Sanana Café

2025.06.11

「美味しくて、ちゃんと自分にやさしい。そんなスイーツです。」

商品開発のプロとして、企業の最前線で多くの人の手に渡る食品を生み出してきた松本友里さん。
今、彼女が神楽坂で営んでいるのは、すべてに目が行き届く小さなカフェです。

妥協せず素材と向き合い、一つひとつ丁寧に突き詰める――。そんな彼女がたどり着いたのは、国産米粉や発酵食品を取り入れた、“からだ想い”でありながら“満足感の高い”スイーツでした。

今回の取材では、カフェ開業までの道のり、食へのこだわり、そして神楽坂というまちへの想いを伺いました。

株式会社GRIT LILY 代表取締役
松本 友里 Matsumoto Yuri

一人旅で海外を巡るのが趣味という行動派。旅先では地元の市場を覗き、その土地ならではの食材やスイーツを味わうのが何よりの楽しみ。これまでの経験と旅で得た発見をヒントに、Sanana Café ならではの“やさしいご褒美”を提供している。


“ぴょんこ”と、夢が芽を出した

開業までのいきさつを教えてください。
「もともとはまったく違う分野……英文科の大学に通っていました。ただ当時から、美味しいものを食べることが大好きで、料理やお菓子作りが趣味でした。美味しいものって、幸せな気持ちになりますよね。で、ある時ふと思ったんです。食で人を元気にできたらいいなぁって。20歳のときでした。そこから一念発起して、栄養士の学校に入り直しました。」
そこから調理の道へ?
「いえ、卒業後は企業で商品開発を担当していました。大手コンビニのお弁当やレストランの新メニューに、イタリアン系のイベント。ジャンルも業態も多岐にわたる企画に関わらせてもらいました。でも、お客様に“美味しいもの”を届けたい一心で全国各地の味を探求しているうちに、無理がたたって体調を崩してしまって……。しばらく休養したあとに、次は大手カフェチェーンに再就職しました。こちらでは、ワインやカクテル、コーヒー、多くの人に楽しんでもらえるカフェメニューから、素材にこだわった高単価なメニュー開発まで幅広く経験させてもらいました。ソムリエの資格を取ったのもこの頃です。ただ、生産者さんと直接お話しするなかで、作り手の想いよりも効率や再現性を優先しなければならない場面もあって、少しずつジレンマを感じるようになっていったんです。とはいえ、仕事自体はとても楽しくて、制約の中でも少しでも良いものをと工夫する日々でした。でも夢中で走り続けるうちに、自分自身のケアが後回しになってしまって。健康診断では異常がないのに、肌荒れや不調が続くようになったんです。これではいけないと思い、食生活を見直したところ、体調も少しずつ整っていきました。」
「そうした経験を通して、これまで積み重ねてきた味の記憶、栄養学の知識、生産者とのつながり──そのすべてを活かした、体にやさしく、心のご褒美になるようなスイーツを作りたいと思うようになりました。作り手の想いがそのまま届くような、そんな距離感で届けたい。そう思ったら、もうワクワクが止まらなくなってしまって!」

“ビビビッ”ときたのは、ここだけでした

最初から神楽坂で開業しようと考えていたのですか?
「いえ、実はいくつかの地域で物件を探していたんです。でも、なかなか理想の場所に出会えなくて……。そんなとき、神楽坂に住んでいるスタッフが“こんな物件あるよ”って紹介してくれたんです。見に行ってみたら、工房があって、テラス席もあって、居抜きで使えて、木のぬくもりもあって…もう、全部が理想通り。家賃も、頑張ればなんとかなりそう。それなら、思い切ってやってみようって。」
「しかも、周りを見渡すと、オーガニックや米粉のパン屋さんなど、食や暮らしに丁寧に向き合っているお店がたくさん! そういう価値観を大切にする人たちが集まっているまちなんだなと感じました。実際にご来店くださるお客様も、Sanana Caféの想いに共感してくださる方が多くて、“美味しかったよ! 元気が出た、また来るね”と声をかけていただくこともしばしば。こちらが元気をもらってしまうくらいで、想像以上にあたたかくて、本当に感動しました。」
2階のイートインコーナー
(左)窓の外にはオープンテラス、ワンちゃんと一緒に /(右)人気のチーズケーキ3種に玄米クッキーサンド

“ぽわん”と、こころに花咲くご褒美を

人気のメニューを教えてください。
「一番人気は、左上にある『甘いプロローグ』というレアチーズケーキ。グルテンフリーで、保存料不使用の北海道産クリームチーズに、A2ミルク由来のオーガニックヨーグルトを使用しています。A2ミルクはオメガ脂肪酸が豊富で、今、世界的にも注目されている乳製品なんです。そこに、垣崎醤油店の有機玄米甘酒も加えています。実はこのケーキ、てんさい糖をほんの少ししか使っていないんですよ。」
お好きなチーズケーキと焼き菓子が楽しめる『神楽坂プレート』(1,480円税込)
えっ!? では、この滋味深い豊かな甘さはどこから?
「甘酒の自然な甘みと玄米ならではの深み、カンボジア産パインやインカベリーなどのドライフルーツです。土台は国産玄米粉を焙煎したものにナッツを加えたサクサクのクッキー生地。香ばしさと食感が、味のアクセントになっています。生クリームは使っていないのですが、“濃厚なミルク感なのに、後味が爽やか! 食べ進めるごとに味が変わって、満足感がすごい”とご好評をいただいています。実はこだわりすぎちゃって、原価ギリギリなんです(笑)。」
左下のネコちゃん、かわいいですね!
「神楽坂はネコのまちじゃないですか、だからネコのスイーツが作りたくて。この『猫又フィナンシェ』は、ブリーズ・ドゥ・メール(発酵バター)をたっぷり使い、さつまいもの自然な甘みを最大限に生かしています。右にあるのは自然農法で作られた、大分県とよくに農園の米粉を使ったシフォンケーキ。こちらは甘酒で味を整えているから、ふんわり、しっとり。やさしい口あたりが人気です。どのスイーツも卵は“はやしなちゅらるふぁーむ”の平飼い有精卵。豊かな自然の中で育った鶏たちの恵みが、しっかりと味にも表れているんですよ。」

“ここがいい”って、言ってもらえる場所でありたい

今後の展望を教えてください。
「今はスイーツがメインですが、野菜や発酵食品を使ったランチも少しずつ増やしていきたいし、アレルギーのある方にも安心して楽しんでいただけるようなスイーツにも挑戦したい。あと、地域の生産者さんとのコラボという夢もあります。神楽坂には芯のある個性的なお店が集まっていますよね。珍しい野菜を扱うお店さんや、こだわりのフルーツ農家さんとも連携できたら。そうしたお店が、神楽坂ならではの魅力を形づくっていると感じます。Sanana Caféも、その景色に自然と溶け込むような存在になれたらと思っています。」
「やりたいことが、まだまだたくさんあって」と目を輝かせる松本さん。その情熱が、一つひとつの素材に向き合う丁寧な手仕事となって、ふっと心がほどけるような味わいを生み出しています。

さんぽが心地よいこの季節。自分への小さなご褒美を探しに、Sanana Caféまで足を運んでみては。

今回、取材にご協力いただいたのは代表の松本さん。
お店で会えたら「かぐらびと見ましたよ!」ってひと言、頼むな!

店舗情報

店名
Sanana Café
住所
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂6-23
営業時間
[日・月・火]
11:00 - 18:00(月曜日はテイクアウト販売のみ)
[水・木・金・土]
11:00 - 19:00
※2025年7月からは11:00 - 18:00(月曜定休日)となる予定です。
定休日
年末年始
駐車場
公式SNS
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この記事を書いた人

かぐらむら編集局

隠れた名店や話題の最新スポットを実際に訪れ、取材しています。神楽坂を知り尽くした編集局ならではの視点で、皆さまに新たな発見をお届けします!

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