ESSAYかぐらびと

小規模ワイナリーの希少ワインが買えるお店 | グルトンベール

2025.03.12

神楽坂の閑静な住宅街に佇む「グルトンベール」。
ヨーロッパの小規模ワイナリーの希少ワインを、最高のコンディションで提供しているワインのセレクトショップです。
2016年の開店以来、神楽坂になくてはならない存在として愛され続けています。

今回は野原さんご夫妻に、お店のことやワインへの想いについてお伺いしました。

グルトンベール オーナー
野原正哉/野原みゆき 

デンマークの農務省の外郭団体でプロモーション業務に携わっていた正哉さんと、イラストレーターとして活動していたみゆきさんは、仕事を通じて出会い結婚。夫婦で飲食店を経営し、みゆきさんは女性ソムリエの先駆けとして各種メディアで取り上げられる。一度飲食業界を離れるも、神楽坂で「ワインクラブ・ラタブレ」を再開。ワインの品質と管理にこだわり、理想的な提供環境を追求し続ける中で、2015年7月、グルトンベール合同会社を設立し、みゆきさんが代表に就任。


ビストロからワインショップへ

開店までの経緯を教えてください。
 みゆきさん (以下敬称略)「ワインも提供するビストロを下北沢でやっていたんですが、お客様と接するうちにワインへの興味がどんどん深まっていって……。渋谷に移転したタイミングで本格的にワインに力を入れるようになりました。当時はワイン専門店が少なかったので、かなり試行錯誤しましたね。」
ソムリエの資格はそのタイミングで?
 みゆき 「はい。やっぱり自信を持ってお客様にワインをおすすめするには、しっかりとした知識が必要だと感じました。学ぶうちに、“この魅力をもっと多くの方に伝えたい”という思いがどんどん強くなっていったんです。そんなとき、夫の仕事の関係で神楽坂とのご縁が生まれました。さらに、物件のオーナーが夫の大学の先輩だったこともあり、これはもう運命だなと(一同笑)。」
 みゆき 「毘沙門天の近くでワインレストランを開いたんですが、もっと自由にワインを楽しめる場を作りたくなって、赤城下町にワインショップを開くことにしました。今はレストランを閉じてグルトンベールに全てを集約しています。」

ワインは生き物

どのようなこだわりを持ってワインを提供されていますか?
 みゆき 「うちのワインはすべてセラーで管理し、常に最高の状態で提供しています。信頼できるインポーターと密に連携し、品質の確かなワインだけを厳選して仕入れています。また、試飲会にも積極的に足を運び、実際に味を確かめたうえで選んでいます。ヴィンテージの違いだけでなく、瓶詰め後もワインの味は変化し続けるんです。」
(左)気軽な普段遣いにお勧めのスペインワイン。1,000円台でも嬉しいクオリティ。/(右)セラーの様子
 みゆき 「例えば、飲み頃だと思っていたワインが、突然“閉じる”ことがあります。“閉じる”というのは、香りや味がぼんやりとしてしまい、本来の魅力が発揮されない状態のことですね。 でも、時間が経つとまた開き、さらに美味しくなるんです。まるで呼吸をするように変化を続ける——それがワインの面白さであり、難しさでもあります。うちでは徹底した管理と定期的な試飲を行い、常に最高の状態でお渡しできるよう心がけています。」
フランスを中心にヨーロッパの真面目な作り手のワインをラインナップ。中心価格は3,000円から20,000円。
ワインを無料で3ヶ月間、セラー保管できるサービスもあるとか。
 みゆき 「“サプライズで妻にワインをプレゼントしたいけれど、家に持ち帰るとバレちゃう”とか、“今は飲まないけれど、このワインを買っておきたい”など、飲むまで預かって欲しいというご要望が意外と多いんです。」
セラーを拝見させていただきましたが、素晴らしいですね。
 正哉さん (以下敬称略)「実はセラーや店の内装、システム管理など、全て自分で手がけています。電気系統や水道の配線がちょっと心配だったので、後から専門の方に見てもらったのですが、職人さんたちにも“これ、自分でやったんですか!? すごいですね!”って驚かれてました(笑)。」
かつては印刷所だった空間を、自らの手で生まれ変わらせた。

自宅でもレストランの味を

お惣菜販売を始めたきっかけは?
 正哉 「コロナ禍で外食できなくなったお客様のために惣菜販売をはじめたのですが、想像以上に好評で今も続けています。“この料理にはどんなワインが合う?”と聞いていただけるのは本当に嬉しいですね。」
 正哉 「毎週お惣菜を買いに来てくださる男性のお客様がいるんですが、週末はご家族のために料理を担当されているそうなんです。うちのお惣菜をうまく組み合わせて食卓を整えていて、“これなら自分でも美味しく仕上げられるので助かっている”とおっしゃっていました。そうやって家族の食卓に役立ててもらえているのは、本当に嬉しいですね。最初は“全部自分で作ってる”とご家族に内緒にしていたらしいんですが、ある日お子さんにバレてしまったそうで(一同笑)。」

これからの展望

今後の展望についてお聞かせください。
 みゆき 「ワインは特別なものではなく、日常の中で気軽に楽しめるものです。販売時にご家庭でも美味しく飲める方法をお伝えしているのですが、飲み頃や保管のポイントを知るだけで、ワインの楽しみ方がぐっと広がるんですよ。ワインは難しいと思っている方にこそ、気軽にワインを試して貰いたいです。」
実際に試して「これは便利!」と思ったワインアクセサリーをお店に並べている。
グルトンベールのワインとお惣菜で、日々の食卓をより豊かに、より楽しく彩ってほしい。そんな願いが込められた逸品たちを、ぜひ味わってみてください。
 

今回、取材にご協力いただいたのは、オーナー野原さんご夫妻。
お店で会えたら「かぐらびと見ましたよ!」ってひと言、頼むな!

店舗情報

店名
グルトンベール
住所
〒162-0803 東京都新宿区赤城下町32 小高ビル1F
営業時間
12:00 - 20:00
定休日
毎週月曜日・火曜日
駐車場
ページ
公式SNS
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この記事を書いた人

かぐらむら編集局

隠れた名店や話題の最新スポットを実際に訪れ、取材しています。神楽坂を知り尽くした編集局ならではの視点で、皆さまに新たな発見をお届けします!

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