ESSAYかぐらびと

心がほどける、余白のあるリノベーションデザイン | Studio INTERENO DESIGN

2025.04.02

「家という“箱”だけじゃなくて、“暮らし” をデザインしたいんです。」

Studio INTERENO DESIGN(スタジオ インテリノデザイン)は、女性の感性とリノベーション現場での経験を生かし、暮らしに寄り添いながら心地よさを紡ぐ、住まいのリノベーションデザイン会社です。
深呼吸するように、自然と心がほどける住まいづくり。その背景にある想いや哲学を、代表取締役・ 杉山和佳子さんから伺いました。

(株)インテリノデザイン 代表取締役
杉山 和佳子 Sugiyama Wakako

二級建築士/インテリアコーディネーター/DIYリフォームアドバイザー 一般社団法人日本インテリアコーディネーター協会 副会長 兼 東京圏支部長 『powder room labo(パウラボ)』リーダー

住友商事グループIT企業での勤務を経てインテリアの世界へ。リフォーム会社で実務経験を積みながら資格を取得し、2003年に独立・創業。2018年「株式会社インテリノデザイン」を設立。


「えいや!」と、異業種から飛び込んだ

どのようなきっかけで、この業界に入られたのですか?
「もともとはIT系で働いてました。毎日充実してはいたものの、どこかで自分の感性や、女性としての強みを活かせる仕事がしたいという想いがずっとあって。それで、ふと立ち止まった際にあらためて考えたんです。」
自分が本当に興味があるものを?
「はい。そのときに浮かんできたのが、“住まい”でした。例えば、どこで食事をするか、どんな空間でくつろぐか。そうした“暮らしのあり方”や“日々を過ごす場所のしつらえ”は、その人のライフスタイルそのもの。住まいはただの器ではなく、人生の在り方に深く結びついていると感じました。だったら、自分が心地よいと感じるものを、誰かの住まいづくりに活かせたら素敵だし、やりがいも大きいだろうなと思って。もちろん、当時はまったくの未経験。資格も知識もない状態でしたから、転職というより、一から学び直すような気持ちで業界に飛び込みました。」

敬意と知識が新しい扉を開く

男性中心の業界に飛び込むのは、勇気がいりましたか?
「あの頃、建築業界はまだまだ古い体質で、職人さんも男性ばかり。私が転職した頃は女性が珍しい時代でもあったので、そういう意味で踏ん張ったっていうか。職人さんと対等に話ができるようになるには、経験を積んでいくしかないので、教えていただくという姿勢で向き合って、ひとつずつ覚えていきました。尊敬の気持ちってやっぱり伝わりますから、こちらがリスペクトを持っていれば、職人さんたちもいろいろと教えてくれる。あの時に現場で学んだことは財産ですね。」
今は当時とは違う?
「体力仕事はやはり男性向きなところもありますが、左官やクロス仕上げのように、細やかな表現力や色彩感覚が活かされる仕事では、芸大出身の女性職人さんなども増えてきています。実はアートの感性が活きる仕事という面もあるんですよね。」

暮らしの輪郭を整える

こだわりをお教えください。
「住まいづくりというと、間取りや設備の話になりがちですが、私は“暮らしを整える” ことが一番の本質だと思っているんです。例えば、リビングに置くソファやダイニングの照明一つで、空間全体の雰囲気や、そこに流れる時間が変わります。実際にお客様から、“照明を変えただけで家族の集まり方が変わった”とのお言葉をいただいたことがあります。」
そんな効果が!
「設計段階から家具のサイズや配置、カーテンなどの窓まわりの機能性やスタイルもイメージしながら空間を組み立てることで、“暮らしやすさ”って驚くほど変わるんですよ。お客様との打ち合わせで“家具を買う前提での設計”をご提案することも多いですね。“この椅子を置きたいから、ダイニングはこの寸法で”なんて会話からスタートすることもあります。」
まさに“暮らしから逆算する設計”ですね。
「必要なのは、隙間なく物が詰め込まれた場所ではなく、“心の余白が生まれる空間”だと思っています。そこに彩りを添えていくのが、私たちの役割です。」
長く快適に暮らしていくための秘訣があれば教えてください。
「家は一度作ったら終わりではなくて、暮らすなかで手をかけてあげることが大切です。日々のメンテナンスはもちろん、10年、15年と節目ごとに設備や内装の状態をチェックして、必要に応じて修繕することで、その心地よさをずっと維持することができる。言うなれば、“暮らしの健康診断”ですね。そして、ライフスタイルにあわせてどんどん変化していくべきです。リノベーションは家を購入したときなど、人生の節目のときにするイメージをみなさんもっていますが、日々暮らしながら、壁のクロスを貼り替えたり、上から塗ってみたり、収納方法を見直したり、水栓だけオシャレなものに取り替えることもできます。カーテンを季節によって変えるだけでもその快適さは違いますよ!」

つながりの輪を広げて

神楽坂にはいつから?
「2007年ですね。京都生まれなせいか、昔ながらの風情と現代的な空気が共存しているまちに惹かれるんです。また、神楽坂は衣・食・住に対して感度の高い人も多く、このまちに根を下ろして仕事をしたいと自然に思うようになりました。」
まちづくりにも積極的に参加されていると伺いました。
「はい。 “住まいづくり”に携わっているからこそ、まちとも関わっていきたいという思いがあります。例えば『まち飛びフェスタ』というアートフェスティバルには、実行委員として参加しています。知り合いの方に声をかけていただいたのがきっかけでしたが、参加することでまちとのつながりも深まりましたし、“暮らしの延長線上にまちがある”という視点をあらためて実感する機会にもなりました。」
まち飛びフェスタ『坂にお絵描き』のリーダーを務める。
最後にコメントをお願いいたします。
「家って“自分らしさ”を表現できる場所でもあると思います。もっと多くの方に、“住まいをプロに相談することで選択肢が広がる”ということを伝えていけたらと考えています。」
「暮らしの中に余白を」という言葉から、杉山さんの仕事の在り方を感じ取れました。隙間を埋めるのではなく、自由に呼吸できる空間を設ける。そこに人は自然と集い、心地よさが生まれる。それはまさに、神楽坂というまちにも通じる在り方なのかもしれません。

住まいを見つめることは、自分らしさと向き合うこと。あらためて暮らしについて考えるきっかけをもらえたインタビューでした。

今回、取材にご協力いただいたのは代表取締役の杉山さん。
事務所やまちで会えたら「かぐらびと見ましたよ!」ってひと言、頼むな!

店舗情報

店名
Studio INTERENO DESIGN(スタジオ インテリノデザイン)
住所
〒162-0821 東京都新宿区津久戸町4-1 ASK ビル2A
営業時間
10:00 - 19:00
定休日
不定休
駐車場
公式SNS
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この記事を書いた人

かぐらむら編集局

隠れた名店や話題の最新スポットを実際に訪れ、取材しています。神楽坂を知り尽くした編集局ならではの視点で、皆さまに新たな発見をお届けします!

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