ESSAYかぐらびと

山梨ワイナリー直送ワイン&カジュアルフレンチ | 神楽坂ルバイヤート

2025.08.27

「東京と山梨を何度も往復して、やっと見つけた“この店の味”があります」

そう語るのは『神楽坂ルバイヤート』の現オーナー、梅谷理恵さん。
2015年に店を引き継ぎ、今年の6月からは料理にも腕をふるっています。

第26回かぐらびとでは、そんな彼女にお店の歴史やこだわりについてお話を伺いました。 

神楽坂ルバイヤート オーナーシェフ
梅谷 理恵 Umetani rie

会社員時代から、ルバイヤートの前シェフの料理に惹かれ、足繁く通っていた。ご縁があり、飲食の世界へ進み、サービス業の奥深さを知り、茗荷谷のワインバー店舗運営を経て、2015年に夫・梅谷淳さんと前シェフと共に「神楽坂ルバイヤート」共同オーナーに。コロナ禍2020年に夫婦で店を買い取り、2025年6月引き継いでから10周年を機に、自ら厨房に立つようになる。また、テディベア作家としての顔も持ち、作品は店内に展示。食とアートが自然に交わる空間づくりにも力を注いでいる。


老舗ワイナリーから始まった物語

開店当時のお話を教えてください。
「ルバイヤートはもともと、山梨のワイナリー・丸藤葡萄酒工業さんのご兄弟で、やまなし大使でもある方が2001年にはじめられたお店です。最初はフランスやイタリアのワインを中心に扱うお店だったと聞いています。その後は、さまざまな個性を持ったシェフが入れ替わりながら、時には本格的なフレンチ、時にはイタリアンと、柔軟にスタイルを変化させ続いてきたそうです。」
中央から丸藤葡萄酒工業社長、左が息子さん、右が夫の梅谷淳さん
丸藤葡萄酒工業さんといえば歴史あるワイナリーですね。
「はい。明治23年に山梨・勝沼で創業した老舗です。地域の歴史を支える存在として日本遺産に認定され、建物も登録有形文化財に指定されています。まだ甘口ワイン全盛の頃から、“世界に誇れる日本の辛口ワインを”という信念のもと、日本固有種の甲州、マスカット・ベーリーAはもちろん、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シャルドネを栽培し、醸造に試行錯誤を重ねてきたワイナリーです。ルバイヤートという店名は、丸藤葡萄酒工業さんのワインブランド・ドメーヌ名からいただいております。」

自分たちの色を重ねていく

どのような経緯でお店を引き継がれたのかお聞かせください。
「茗荷谷で飲食店舗運営を任されていたこと、前シェフを夫が店に紹介していたことがあって、前オーナーから“そろそろ誰かに任せて引退したい”と話しをされ、はじめは共同経営でしたがコロナ禍に夫と私で買い取らせていただきました。」

「店を任されて『ルバイヤート』から『神楽坂ルバイヤート』に店名を変えました。はじめは名前を残さなくても良いと言われたのですが、何より私たちが丸藤葡萄酒工業さんのワイナリーファンですからルバイヤートは残したくて。頭の地名には、神楽坂と山梨をつなげる場所にしたいからという思いを込めてます。このようなご縁で、丸藤葡萄酒工業さんのワインを、直送で取り扱わせていただいております。」
サーブをしている淳さんと、厨房の理恵さん。

テーブルの上に広がる山梨の恵み

おすすめのメニューについて教えてください。
「一番人気は、季節の食材を使った前菜4品とワイン4種類を組み合わせた“ワインと前菜のペアリングコース”(下記写真)です。実は今年の6月、前シェフが家庭の事情で引退され、私が後を引き継ぐことになりました。食材や味に真摯に向き合う彼の背中から学んだことを胸に、いま、新たな挑戦をはじめています。」

「まず私たちが取り組んだのは、山梨まで足を運び、生産者の方たちの生の声に耳を傾けることでした。そこで、気候や風土の変化、高齢化による担い手不足など、さまざまな課題の中で食材が育まれているのだと教えていただきました。生産者さんと直接つながり、旬の食材を仕入れられるようになったことで出会えたのが、キングサーモンと紅鱒を掛け合わせた稀少な紅鱒「富士の介」、地元野菜や果物を食べて育つ「甲斐甘味豚」、ワインづくりで残った果皮や種子を飼料にした「ワインビーフ」、そして老舗「ふたね製麺所」の生ほうとうなどです。選び抜いた食材をより美味しく召し上がっていただくため、料理に合わせるワインも丸藤さんのものを用いています。同じ土地から生まれる恵み同士の調和を大切にしたいからです。こうして築いたご縁から一般には出回らない希少な食材を扱えるようになり、“新しい神楽坂ルバイヤートの味”へと歩みを進めているところです。」

「また、夫は専門知識だけではなく経験も求められるシニアソムリエ(現ソムリエ・エクセレンス)の資格を持っていますので、産地や品種の魅力、料理との相性、そしてその一杯と一皿に込められた物語まで楽しんでいただけるよう、お客様にご案内しています。新鮮な野菜の中には彼が菜園で育てたものもあるんですよ!」
左から「富士の介のカルパッチョ」「新鮮野菜サラダ バーニャカウダソースで」「ワインビーフランプ肉のステーキ ルバイヤート赤ワインソースで」
持ち込みワインのサービスもあるとか?
「はい。いちばん美味しく味わえるグラスを使い、引き立てあうお料理をお出ししています。ワインを落ち着かせておくために、1週間前からお預かりすることが可能です。とても高価なワインをお持ちくださったお客様から“この店なら安心して任せられる”と言っていただけた時は本当に嬉しかったですね。」

アートも楽しめるレストラン

ギャラリースペースがあるお店は珍しいですね。
「実は私、20代の頃からテディベアを作っている作家でもあるんです。平面の生地から立体のぬいぐるみができることに魅了され独学で始め、今も時間を見つけては少しずつ作り続けています。作品づくりは孤独になれる時間であり、料理作りとは違う集中ができ、心からリラックスします。ただ作品を発表する場はなかなか敷居が高く、展示費用も作品を売りながらだと厳しいのが現状です。」
梅谷さんが作ったテディベア。テディ ベアコンテストで受賞した作品。
「お店を引き継いだときに、壁に温かみを加えたくてアーティストの友人に作品を飾ってもらったのが、ギャラリースペースの始まりです。お客様から好評をいただき、ならば作家さんの発表の場を増やす場所になればと10年間、月替えで様々な作家さんのいろいろなジャンルの作品をお預かりしています。毎年2月には「猫バカり展」と名前をつけた、たくさんの作家さんの猫作品が並ぶ企画展も。」
アートが飾られている店内。展示代は無償。写真の展示は歌手でもあるMahoko Taniguchiさんの蓮の葉アート。会期中ギタリストの村治奏一さんのライブで歌声を披露する機会も。
かぐらむらのぽちぶくろも。
「日曜のお昼にはギャラリーだけでも気軽にご覧いただける時間を設け、ワークショップやミニライブも開催。先日は、ワインを楽しみながらのシャツオーダー会も行いました。作品を観ながらワイン片手に会話が広がり、作家さんが在廊しているときには、お客様とのやり取りで場が一層にぎわいます。アートと食、そして人と人が自然に交わり、思いがけない交流が生まれる——そんなやわらかな広がりを持つ空間に育っています。」
(左)実話をもとにした飼い猫りおとアボカドの絵本。/(右)本に登場する大きくなったアボカドがお店の植栽の中に。
これからのお店の展望について教えてください。
「これからも、山梨のとっておきの食材を使った料理とワインをお客様に届けていきたいと思っております。そして、心も体もくつろいでいただける場所であり続けたいと考えています。」
一杯のワインからはじまった物語。
豊かな恵みが凝縮された生産物を味わえる一皿。そして人とアートが交差する心地よい空間。

神楽坂ルバイヤートでは、手間ひまを惜しまず人と向き合い続けるからこそ、この店にしかない出会いを生んでいます。

今回、取材にご協力いただいたのはオーナーシェフの梅谷さん。
お店で会えたら「かぐらびと見ましたよ!」ってひと言、頼むな!

店舗情報

店名
神楽坂ルバイヤート
住所
〒162-0827 東京都新宿区若宮町10-7 ヴィラ若宮 102
営業時間
[火~土] ディナー17:00 - 23:00 (Lo.21:45)
[日]ワインSHOP&角打ち13:30 - 17:00
定休日
月曜日
駐車場
公式SNS
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この記事を書いた人

かぐらむら編集局

隠れた名店や話題の最新スポットを実際に訪れ、取材しています。神楽坂を知り尽くした編集局ならではの視点で、皆さまに新たな発見をお届けします!

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