望の1冊と言っていいでしょう。
値段も手頃です。
映画ライター、映画批評家たちにとっても、なじみのない北欧の歴史・文化の知識が得られますから、北欧映画紹介や解説に有用でしょう。
...自分が観賞済み作品(23作)の解説に目を通しましたが、映画の理解が深まりました。何気ない台詞やシーンに北欧のその時代の実相が表現されていることがよく分かり、疑問がとけます。
hygge、幸福、可愛いデザイン、果てはフリーセックス等、北欧をイメージする手垢のついた言葉を引用して書かれた映画紹介文とは決定的に違います。
37名の著者の中でも、注目はノルウェー映画を多く紹介する成川岳大氏です。楽しそうに書いてるのがよくわかるし、守備範囲も広く、ノルウェー文化への愛情が伝わってきます。『トロールハンター』にそれがよく現れています。
トロールがネット上の”マナーの悪いユーザー”を指すことを氏の文章で初めて知りました。
「第7部 日本:北欧関係」で紹介されている北欧関連日本映画「世界を賭ける恋」は知りませんでした。駆ける、でなく、賭けるです。
主演は石原裕次郎、浅丘ルリコ。1952年に羽田ーコペンハーゲンにSASが就航したがその頃の話です。当時の北欧の街並みが随所にでてくるようです。
ネットで調べると「武者小路実篤原作「愛と死」より。邦画界空前の欧州ロケ敢行、世界の恋人裕次郎が愛と涙で贈る世紀の超大作ロマン篇」とあります。なんかムチャクチャ大げさでいいですね。
後書きに200作品の中から60作品を選んだとありますが、意外に新しい作品も採用されていて、作品選びに一貫性があるとはおもえません。仕方ないのかもしれませんが。
最後に、第一部「北欧映画入門-代表的映画監督」でラース・フォン・トリアー作品が紹介されていないのは、なぜなのでしょう。彼の作品は60に入っていないし、監督名索引に名前すらありません。
本書の主旨に合わなかったのしょうか。