第1話 加能作次郎の「早稲田神楽坂」の巻
大正12年9月の関東大震災の後、東京のまちはどのように復興・発展してきたのでしょうか。昭和2年6月より「東京日日新聞」夕刊に加能作次郎の「早稲田神楽坂」の連載が始まりました。「東京日日新聞」では、当時の人気作家や文化人を登用して、その作家と地縁の深いまちをルポ、回想、都市論などさまざまな視点や手法で執筆を依頼しました。 たとえば、高浜虚子の丸の内、田山花袋の日本橋附近、芥川龍之介の本所両国など。執筆者の顔ぶれは、さらに岸田劉生、久保田万太郎、谷崎精二、小山内薫など、当時を代表する文化人ばかり。豪華でその仕上がりは名作ばかりと言われています。 われらが加能作次郎先生は、北陸の出身ですが、早稲田大学に学び、神楽坂を第二の故郷と公言し、卒業後も早稲田神楽坂界隈を歩きまわり、まさに「楽楽散歩」のように楽しんだ人です。「早稲田神楽坂」の書き出しは本多横丁にあった床屋のシーンからはじまります。そこには昭和2年の空気が濃密に広がっています。 (マップE-2) |