【引き出しをふやしたフィンランド映画】
過去3か月連続でフィンランド映画が公開されました。
①12月27日公開『ヘヴィ・トリップ-俺たち崖っぷち北欧メタル』(監督:ユッカ・ヴィドゥグレン/ユーソ・ラーティオ)
... ②1月17日『オリ・マキの人生で最も幸せな日』
(監督ユホ・クオスマネン)
③2月28日『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』(監督クラウス・ハロ)
①は同国映画に珍しいスラップスティックコメディで、口コミで広がりメタルファンのみならず、多くの世代に支持されにロングランしました。②は、1960年代に活躍したフィンランド人ボクサーの恋を描いた映画。監督自らが、わざわざ白黒フィルムを世界から買い集めて撮影したモノクロ映画。③は、『ヤコブへの手紙』で絶賛された、ストーリーテラーの監督が描く老いた画商の物語です。
①はフィンランド文化と北欧文化を弄ったギャグが秀逸で、抱腹絶倒、間違いなし。②,③は手堅い演出と映像の美しさが光ります。③のヘルシンキの秋の映像は郷愁を呼び覚まします。
3作とも見てソンのない映画です。できることなら是非劇場でごらんになってください。①はDVDでも十分楽しめるかもしれませんが、②,③の映像の美しさはTV映像では拾えません。
フィンランド映画というと、これまで日本ではアキ・カウリスマキの存在が大きすぎてそこに集約される感がありましたが、過去10年、徐々に才能がでて北欧5カ国の中でも引き出しを急に増やした感じがあります。『アンノウンソルジャー』のようなスケール大きな作品も出てきました。
http://unknown-soldier.ayapro.ne.jp/
最近公開の3作品の監督は、みな若く、監督業が初めて(ヘヴィ・トリップ)という人もいます。ですから伸びしろが多く、これからがとても期待できるのです。
3カ月連続でフィンランド映画が日本で公開された事が、興行上の偶然なのかわかりませんが、同国映画はそれなりに集客力があるとバイヤーに考えられているからでしょう。
幸福な生活が約束されたかのよう言われる同国ですが、3作とも主人公は日常の苦労を抱える「平凡な生活者」。スーパーヒーローはでてきません。
だからこそ深い共感を呼び起こしてくれるのです。