前号「奥神楽坂特集」を発行して間もなく小誌を片手に、奥や裏を歩く人を何度か見かけた。中心地から奥神楽坂エリアへ足を運ぶ人が増えることによって、神楽坂全体の動きも、風通しもよくなっていく気がする。定められたエリアでエネルギーの圧力が高まるばかりでは限界がある。より奥へ広がってこそ、神楽坂全体も面白くなる。特に神楽坂の奥には、魅力的なギャラリーが増え続けている。つまり文化のつぼみがあちこちで咲きはじめた。「奥は、未来だ!」という言葉、時間が証明してくれる。
■足もとから明るくしたい
ディ・ミリア

オーダーメイドシューズの工房、ディ・ミリア。職人の宮島さんは3年半イタリアの靴職人の下で修業を積み、帰国後、神楽坂の小路に工房を構えた。宮島さんの制作方法は手間と時間はかかるものの、メンテナンスをしつつ正しく履けば、一生履き続けられる靴を作り上げることができる。良質な革を使い、またミリ単位の細部にもこだわったフォルムは、古びることなく味わいを出していく。「靴を履いてパッとした気持ちで街を歩いていただいて、その周りの人たちもパッと明るくなれるような、そんな靴を作っていきます」と宮島さんは話してくれた。

住所|東京都新宿区矢来町122 1階
お問い合わせ|03-3269-3553
定休日|日曜日、月曜日
かぐらむらの店舗紹介ページ|https://kaguramura.jp/detail/77/index.html
■これは、どう考えられますか?
eitoeiko

2009年4月にデビューした現代美術の企画画廊。現代美術と聞くと、難しいと感じる人が多いかもしれない。何かを考えようとしなければ楽しめないことは確かであるものの、eitoeikoは間口を広くして展示を企画しているギャラリーだと、ディレクターの癸生川さんは言う。ギャラリーとしての活動は神楽坂にとどまらず、国内のアートフェアはもちろん、海外のアートフェアにも参加している。矢来町の閑静な住宅街の途中eitoeikoの扉を開ければ、常識にとらわれない、新たな着想が得られるだろう。

住所|東京都新宿区矢来町32-2
お問い合わせ|03-6873-3830
URL|http://eitoeiko.com/
■奥への入り口に文化の交差点
セッションハウス


1991年、コンテンポラリーダンスの表現の場としてセッションハウスはスタートし、現在もダンス公演の企画数は年間50を越えるに至っている。1995年にはギャラリー・ガーデンも開設された。ガーデンでは形式やジャンルにとらわれず、展示はもちろん演劇やトークも実施されていて、文化的な総合スペースになっている。美術(静)とパフォーミング・アーツ(動)をテーマにしたクロッキー会も行われており、多様な表現の分野がクロスオーバーしている空間だ。セッションハウスを訪れれば、ダンスや絵画などの様々な表現が、互いに結びついているということを体感できるだろう。

住所|東京都新宿区矢来町158
お問い合わせ|03-3266-0461
かぐらむらの紹介ページ|https://kaguramura.jp/detail/22/index.html
■新人アーティストを応援
ギャラリー楽水

ギャラリー楽水は写真や絵画の展示を基本とするレンタルギャラリー。和の雰囲気が漂う空間で設備は充実、畳部屋も併設されている。ギャラリーとは名が付くものの、展示はもちろん、落語やミニライブ、句会やセミナーなど多目的の文化スペースとなっている。ジャンルにこだわることなく、要望にできる限り応えるかたちで、若いアーティストや、ほとんど素人という方の展示も応援していきたいという。神楽坂で展示デビューをしたい方には、特におすすめのギャラリーだ。

住所|東京都新宿区矢来町95
お問い合わせ|03-6712-2220(COIL)
URL|http://rakusui.info/
■もの買ってくるは、ひと買ってくるだと思うので
gallery坂

オーナーの中川さんは出会いを大切にしながら、作家と作品をあわせて見ることで、そのセンスやクオリティを邪魔しないようにしつつ、中川さん自身も楽しいと感じる展示を企画していく。陶磁やガラス、木彫、金工、染、平面、古道具と、年間を通して様々に催している。常に実験的、冒険的な展観も大歓迎だという。「作品はもちろんですが、作家という人も大切な要素です。作品を見に来てもらうのと同時に、それを生み出す作家にも興味を持ってほしい、その人の手を感じてほしいと思います」と中川さんは話してくれた。

住所|東京都新宿区築地町2
お問い合わせ|03-3269-8330
かぐらむらの店舗紹介ページ|https://kaguramura.jp/detail/30/index.html
■美しいカオリを、美しいくらしに
Juttoku.

店内のお香はすべてJuttoku.オリジナルの商品。淡路島の職人さんによって、昔ながらの手間暇をかけた方法で作られている。古くは平安時代から慕われてきたお香には、リラックス効果や精神集中の効果が期待できるので、女性はもちろん、最近では男性のお客さんも増えてきているという。店内にはお香づくりの体験コーナーもあり、お香が何から、どうやってできているのかを紹介。心を落ち着かせてくれる時間を過ごせる。お香が初めてという方にも、ひとつひとつ丁寧に教えてくれるので、ぜひ気軽に足を運んでみてほしい。

住所|東京都新宿区弁天町23 ホワイトキューブ101
お問い合わせ|03-6205-5211
営業時間|12:00-19:00、土曜日・日曜日・祝祭日11:00-
定休日|月曜日、木曜日
URL|http://juttoku.jp/
■ここはちょっと違うよね、面白いよね
神楽坂 暮らす。(現:コハルアン)

暮らしで使う器を中心に、日用雑貨なども扱うお店。店主のはるやまさんが日本各地で出会った、綺麗で作家ものでありながら、手の届きやすい工芸品が並ぶ。もっともすべてが作家ものではなく、窯元や工房の品も扱われている。「個人作家と同じように、窯元も私たちの暮らしを支えています。それはそのままお客さんに見せたいんです」とはるやまさん。手仕事や工芸に興味を持ち始めたのなら、暮らしをもう少し充実させたいのなら、神楽坂 暮らす。へ。 器に加え、見て心が和むような小物も扱いつつあるとのこと。

住所|東京都新宿区矢来町68 アーバンステージ矢来101
お問い合わせ|03-3235-7758
定休日|月曜日、火曜日
URL|http://www.room-j.jp/
■茶室で心のチューニング
春風庵

天神町のビルの6階、扉を開けると思いもよらない異空間が広がる。美しく静謐な茶室である。小笠原流煎茶道の茶室で「春風庵」という。庵主は鈴木翠江さん。その室礼をお聞きして納得した。NHKの美術担当と空間デザイナーがつくったからだ。ビルの6階なのに時空を超えて心が落ち着くのは、そのせいかもしれない。通うのは、神楽坂に仕事場のある女性が多く、「ここで心のチューニングをしている」とか。お稽古の時間帯は、仕事帰りに都合のよい夜に設けられている。お稽古で、一日の疲れがとれるという人も少なくない。

住所|東京都新宿区天神町68 滝沢68ビル6階
お問い合わせ|info@shunpuan.jp
稽古日は、隔週水・金・土曜日の午後
URL|http://www.shunpuan.jp/
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