春爛漫。2017年4月15日(土)には2年ぶりに「神楽坂をどりの会」が開催されます。2016年を休んだ分、今年は気合いを入れて“これぞ神楽坂”をお見せいたします。とお聞きしたので、早速見番へ取材に行ってまいりました。

東京神楽坂組合理事長 渡邉和子さん

神楽坂芸妓組合組合長 眞由美さん

「かぐらむら」編集部 長岡弘志(司会)

撮影:渡部晋也

今年は酉年。大きく羽ばたく年にしたい

司会2017年は2年ぶりに「神楽坂をどりの会」があるとお聞きして、とても楽しみにしているのですが、なにか特別な思いがあるのでしょうか。

渡邉昨年は「神楽坂をどりの会」が開けずに、皆様には大変ご心配をおかけいたしました。1年間の充電期間を終え、今年は組合の皆が一つになって会を盛り上げていこうという気運になっております。酉年だから大きく羽ばたこうじゃないかと。

司会東京オリンピックも近づいてきましたし、和の文化を大切にする花柳界への期待も集まっているのではないですか? 前の東京オリンピック(昭和39年)の時はどうでしたか?

眞由美海外からいらっしゃるお客様のことを考えて、私たちは英語まで習ったのですが。少しあてがはずれました。黒の小紋の引き着をつくったり、五輪のマークが入った扇子で東京音頭を踊ったりもしましたが、それほどではなかったです。

司会前の東京オリンピックの頃は、高度経済成長期の真っ只中でした。あの頃に比べたら、確かにそれほど期待はできないですね。

渡邉オリンピックで日本の伝統的な和の文化に期待が寄せられていることは承知していますが、いま大切なことは、長引いているこの不況の中で、小さいながらも一つの花街としてしっかりと地元に根をはって団結していくことです。そうでないと、これからの難局を簡単には乗り切れないと思います。

清元と長唄のかけ合いで演じる「女忠臣蔵」

司会今年の出し物は、「女忠臣蔵」とお聞きしています。毎年の例ですと、約一時間の公演の中に、いくつもの演目がつまっていましたが、今年は「女忠臣蔵」のみ一本でいくそうですね。何か理由があるのですか?

眞由美私たちの踊りを指導してくださる花柳輔太朗先生は、京都の上七軒にもお稽古場をもっていらして、以前に京都で「女忠臣蔵」を公演されたそうです。実は神楽坂でも、以前に「忠臣蔵」をやったことがあります。(昭和六十一年十一月に三越劇場で)その時は、(花柳)輔三朗先生(輔太朗先生の父)の頃でした。私も女将さん(渡邉さんのこと)も出演しましたが、今回はまたその時とはちょっと内容がちがいます。(昭和61年度のは、「忠臣蔵俗曲十二段返し」と記録に残っている)

司会今年はNHK土曜時代劇でも、忠臣蔵志士の恋人を主人公にしたドラマをやっていました。また過去には「女たちの忠臣蔵」という志士の妻や恋人の視点からつくられたドラマもあり、私のように混同しやすい者を代表してお聞きしますが、「女忠臣蔵」というのは、「忠臣蔵」の配役をすべて女性だけで演じるものを指すのですね。

眞由美そうです。「女忠臣蔵」は、女性だけで演じる「忠臣蔵」で、男性はもちろん出てきません。今回の内容は、大序から十一段目(討ち入りのシーン)まですべてを通しでやります。場面ごとに清元と長唄のかけ合いでやりますので、地方さんは幕が開いてからは休む暇がありません。衣装は、同じ着物で通します。

司会セリフはないのですか?

眞由美少しはあります。お腹の中で芝居をするのです。同じ着物で通しますが、最後は黒の引き着でフィナーレとなります。

 

今回見逃すとそうは見られない、すばらしい踊り手二人

司会今回の見どころを教えてください。

渡邉眞由美さんと由みゑさんのお二人は、私の友だちの中でも、組合の役員などもしていますが、すごい踊り手です。このお二人がしっかりと舞台に出て踊るのは、これからそうは見られないかと思います。実はこのお二人の大御所が出るから、「女忠臣蔵」が神楽坂でもできるんです。眞由美さんは吉良役をやるのですが、すばらしいですよ。

眞由美私は憎まれ役の吉良上野介、由みゑさんは、与一兵衛と定九郎の一人二役です。

司会芸者さんが、踊り、うた、楽器が上手なのは当然ですが、芝居まで上手とは、すばらしいです。でも踊る機会がなくなるのは、残念ですね。

眞由美 「神楽坂をどりの会」で踊るのは、なかなかないと思います。それはなぜかと言えば、地方さんとの兼ね合いなのです。由みゑさんも同じです。私たちが地方に出ないと、今度は地方さんの数が足りなくなるのです。

司会今年が見納めかもしれないとなると、心して見ないといけないですね。

渡邉残念ですが、その分私は思いっきり力を入れてやりますから。組合の理事長として"これぞ神楽坂!"を皆様にお見せしなくてはいけないと。神楽坂は今、芸者さん十九名、料亭四軒と小さな花街ですが、小さいながらも皆で力を合わせて精一杯やりますので、ぜひ応援をお願いします。

司会今年はやはり特別な思いなのですね。

渡邉やはり"神楽坂に花街ありき"というのをわかっていただきたい。そのためにもぜひ「神楽坂をどりの会」におみ足をお運びください。

司会本日はお稽古の忙しい中、ありがとうございます。

神楽坂をどり 最近の演目一覧

第二十九回  平成23年4月9日 於 神楽坂劇場

一、卯の花 清元
二、松の羽衣 常磐津
三、神楽のにぎわい 長唄 俗曲

第三十回  平成24年4月7日 於 神楽坂劇場

一、獅子 素囃子
二、島の千歳 長唄
三、神田祭 清元
四、春の夢常磐賑 常磐津 俗曲

第三十一回  平成25年4月6日 於 神楽坂劇場

一、鶴亀 常磐津
二、雪月花 長唄
三、華の姿絵 吹寄せ

第三十二回  平成26年4月5日 於 神楽坂劇場

一、四季三葉草 清元
二、 粟餅 常磐津
三、江戸の粋曲 吹寄せ

第三十三回  平成27年4月4日 於 神楽坂劇場

一、三社祭 清元
二、万歳 義太夫
うぐいす 大和楽
三、風流神楽の乗合 吹寄せ

写真:中道順詩

 

 

 



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