【止まらない「ヘヴィ・トリップ」】
暮れも押し詰まった昨年12月27日、フィンランド映画『ヘヴィ・トリップ-俺たち崖っぷち北欧メタル!』が、比較的慎ましく公開されました。公開の中心になったシネマート新宿で封切り日に見ましたが、7割くらいの入りで1日2回だけの上映でした。内容が内容ですし、キャッチコピーが「後悔するなら、クソ漏らせ」ですから、1月半ばでトリップも終わるのかなと思っていました。が、同作品の快進撃はいまだに続いているのです。
公開後、SNS(ツイッター)で、あまりにばかばかしい内容の本作を見て、脳と人格を弄られた人達(あるいは本性が蘇った人達)の絶賛コメントがあふれ、また同映画の公式ツイッター(https://twitter.com/heavy_trip_jp)のマメで絶妙な「デス・コメント」や劇場での「デスボイス(Death Voice)」割引等の営業活動が功を奏し、人気がメタルロックファンを中心に野火ように広がりました。鑑賞機会に恵まれない遠方(例えば北海道)からもこの作品もみるためだけに上京する人もいました。2回目観賞にいくと...映画館の本作品ディスプレイはボルテージがあがり、観客も増加、記念Tシャツも品切れ状態になっていました。
そして上映期間も上映館数も日に日に伸び、トリップ(Trip)は「ジャーニー(journey)」に変わりつつあります。なんだか夏頃には「ヘヴィ・トリップ・マジカル・ミステリー・ツアー」となり、舞台になったフィンランドの田舎町が日本からの巡礼者であふれそうな勢いです。
本作品のストーリーを公式HPの文言を参考にご紹介しておきましょう。
フィンランド北部、何もない田舎の村にインペイルド・レクタム"(Impaled Rektum)という4人組ヘヴィ・メタルバンドがありました。彼らは結成以来12年「ステージに立つことなく、一曲もオリジナル楽曲を作ったこともない単なるコピーバンド」でした。バンドは“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”を標榜し、ひたすら地下で練習を繰り返すのみ。しかしある日、ひょんなことからノルウェーの巨大メタルフェスの主催者がメンバーの家を訪れ、ノルウェーの「巨大メタルフェスに出場」という、自動販売機の釣り銭口に500円玉をみつけたようなビッグチャンスが訪れます。町を挙げての先走った応援も始まり、メンバーの写真撮影にも成功していよいよノルウェー行きの態勢が整います。が、しかし……。
公式HPは以下です。
http://heavy-trip-movie.com/news/
ムーミンやオーロラ、映画「かもめ食堂」などでフィンランドファンになった人なら、1月17日公開の『オリ・マキの人生で最も幸せな日』の方をチョイスするかもしれません。しかし本作も実にフィンランド人らしい作品です。本作品は、北欧ネタのギャグやどぎついジョークであふれていますが、カウリスマキの作品にもある限りないヒューマニティ(人間愛)が流れています。北欧ファン必見の映画です。