第一回 生業(くう)・呑(や)るところに聴くところ

昨年暮れまで、横寺町の尾崎紅葉旧居跡奥に住んでいた臼澤と言います。和食器の店「うす沢」と小さなギャラリーを営んでいました。十年ほど前から箪笥町で、その後納戸町、横寺町と移転しましたので、ご記憶の方がいらっしゃるかも知れません。以前、銀座のコンサートホールで働いていました。そこは多彩なライブイベントが行われる、小規模ながら多目的型の音楽ホールでした。退職までの十数年は支配人職にあり、通常業務以外に新旧職員の入換えやビル老朽化に伴う新ホール建設の現場など、種々貴重な体験も積みました。このことは、現在の仕事と、コンサートホールに関連した二冊の本の執筆に活かされていると思います。

退職後は、ギター演奏や作曲の他、イベントオーガナイザーとして、音楽を中心としたライブエンタテインメントを薦める仕事をしています。

タイトルの「寸呑音楽風景」は、ちょい呑みサウンドスケープと読みます。これから、前職時代に培った趣味の世界や音楽シーンなどを、神楽坂の風景に絡めてお伝えできればと考えています。

昨年秋、矢来町「光鱗亭ギャラリー」のオーナー水野雄介氏と「神楽坂サウンドスケープ」というイベントを立ち上げました。音楽で地域の賑わいと人々の繋がりを、というのが主旨です。神楽坂の和の世界は有名ですが、他にもこの地区には様々な音楽に関わる人や場が存在しています。呼びかけましたら、色々なジャンルの方々が参加してくれました。予想を超えた盛会になりましたので、今年は十二月の開催を予定しております。

このイベントに、天神町の「マッシュレコード」も参加してくれました。この店は、毎週末、音楽好きに舞台を開放していますが、特に金曜日は「ジプシージャズナイト」として賑わっています。長逝した稀代のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの名曲が主として演奏されます。この、マヌーシュ音楽を聴きながら飲む缶ビールは最高です。

十一月二十二日に「マッシュレコード」のオーナー牟田祀也氏と私は、新宿区の箪笥区民センターでコンサートを開催しました。「ジャンゴ一〇八in神楽坂」です。一〇八人で、ジャンゴの曲マイナースウィングを演奏しようというこの企画は、私のふるさと岩手県大槌町の震災からの復興を意識したものでもありました。コンサート当日は、入場者数は大入りとは言えませんでしたが、演奏内容にはお客様が大満足だった様子でしたから、今年も開催する予定でいます。

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仲間が集まればいつでもセッション

街は人がつくるものです。しかし、住む人だけの街は寂れていきます。時おり街に出て、元気な店・人を訪ね、「寸呑音楽風景」(ちょい呑みサウンドスケープ)を楽しもうと私は思っています。

うすざわ・ゆうじ

1948(昭和23)年岩手県大槌町生まれ。銀座・ヤマハホールを退職後、ギター演奏、作曲、イベントオーガナイザーの他、音楽評論、文筆、郷土芸能研究、仏像蘊蓄士、日本楽壇将棋連盟常任理事、ウスザワユージアム館長(北軽井沢)。