第十六回 地域の産業と共に

全国には津々浦々、魅力のある町には、魅力あふれるタウン誌があります。情報の電子化の波に押されて、目立たなくなっている面はありますが、まだまだタウン誌には紙媒体のもつ存在感、やさしい手触り、独特の風合いが残されています。このコーナーでは、そんな全国のタウン誌を紹介します。

『おちゃのおと』

以前、神田神保町と古書店を取り上げましたが、神保町からお茶の水界隈には古書店以外にも蕎麦屋やカレー店、楽器店やスキー用品 店など特定ジャンルのお店が集まっています。そんな地域の「産業」のひとつ・音楽に特化した『おちゃのおと』(発行・ちよだ音楽連合会)もあります。今春でまだ3号ですが、秋のイベント・お茶の水熱烈楽器祭がレポートされているほか、記事や多数の広告から、この地域への楽器店の集積ぶりがよくわかります。こうした地域の産業と結びついたタウン誌はどれくらいあるのでしょう?

『shizuku』

まずは「女の子達よ、ニホンシュに恋をしよう」と強く訴える宮城県の『shizuku』。「ニホンシュに恋しよう!」(23号)「ニホンシュと暮らそう!」(24号)「ニホンシュで乾杯しよう!」(25号)と日本酒尽くしです。内容も蔵ツアーや日本酒に合う料理など、女子でなくとも酒好きにやさしい内容です。発行が「浦霞醸造元株式会社佐浦」となってはいますが、日本酒という商品そのものの紹介より、その周辺を丁寧に掘り下げているのが特徴的です。宮城大学の学生さんも編集に参加しています。

『やくならマグカップも』
『Fのさかな』

岐阜県からは「岐阜県東濃発!くるくるろくろ漫画」を謳う『やくならマグカップも』(元気な多治見株式会社)をご紹介。美少女マンガが目にまぶしくてわかりにくいかもしれませんが、多治見は美濃焼の街なのだそうです。ちなみに16号は登場人物達が次々にタイルに魅入られていくストーリー「タイル狂想曲」が展開されています。この女の子達と多治見の産業とがどのような関係にあるのかはわかりませんが、今年の6月には多治見市モザイクタイルミュージアムがオープンしたそうです。以前紹介した能登の『Fのさかな』も、水産業とわかちがたく結びついているわけですし、地域の産業と結びついたタウン誌はまだまだ他にもありそうです。ただ、特産物や商品を紹介するにとどまらないのが、今回ご紹介したものには共通しています。

『buku』

最後に東京に戻って1冊ご紹介。今はなき池袋の『buku』(2004年創刊)です。池袋シネマ振興会による地域発映画雑誌です。最盛期は過ぎたかのように取り上げられますが、映画は一大娯楽産業です。本誌では、巻頭インタビューに俳優や監督など様々な映画人が登場していたほか、連載エッセーも読み応えがあり、手頃な映画雑誌でもありました。立教大の学生も参加していたそうです。ちなみに毎月29日に本誌を手に池袋の映画館に行くと、料金が1000円になるというbuku割があり、だいぶ活用させてもらいました。残念ながら2011年に31号をもって終刊してしまいましたが、もっと残念なのは池袋の映画館そのものも減ってしまったことです。

高橋正樹
『かぐらむら』編集室