第十七回 古本を介して

「一箱古本市」ってご存知でしょうか?

『ヒトハコ』

文字通り、それぞれが一箱分の古本を持ち寄ってフリーマーケットのように古本市を開催するというものです。その一箱古本市の雑誌『ヒトハコ』が刊行されました(2016年11月刊)。2005年にいわゆる「谷根千」地域の不忍通りではじまったのですが、その発案者・南陀楼綾繁氏が中心になって編集されています。「『本と町と人』をつなぐ雑誌」という謳い文句でもあり、本欄でもご紹介します。

まず目を惹くのが地域イベントとして広がっていることです。「一箱古本市の記録」(74〜75頁)には、2016年1~8月に約80カ所で開催されたことが記されています。もちろん、発祥の地では現在でも開催されています(開催に合わせて配布される『不忍ブックスリートMAP』も12版を数え、キャラクターの「しのばずくん」も2代目です)。

『不忍ブックストリートMAP』

これだけ広がったのは、その「わかりやすさ」と「手軽さ」ゆえでしょう。「これなら自分でも参加できる」「自分たちでもブックイベントが開催できる」と率直に感じ動いた人も少なくないでしょう。ある市でのすべての実際の「一箱」を写したパートあり、工夫しまくりの一箱の紹介あり、と多彩な記録と思いが満載の1冊です。本誌を読んでいますと、そのシンプルさゆえ、それぞれの思いが詰め込めやすいのでは、とも感じました。

他にも、熊本地震での書店の対応や東北での移動図書館など、さまざまな地域での試みも取り上げられています。そんな中で興味深かったのが「ブックイベントのはじめかた、区切りかた」(58〜61頁)です。発祥から10年も経つと「おわりをむかえる」イベントも出てくるということですが、そんな思いまで含まれた1冊です。

ところで、「古本と地域」を結びつける試みに、南会津・只見町の「たもかく」による「あなたの本と只見の森を交換します」という事業もあります(たもかくは、只見木材加工協同組合が母体)。古本を送るとそれに応じた土地が手に入るという仕組みです(事業開始時の詳細は『本、森に帰る』農文協、1995年刊)。1994年の開始以来、多くの本を集め、同地に「本の店」をオープンしたほか、一時期は池袋にも支店がありました。只見での「本の街」展開を目指しているそうです。これ以外にも「たもかく」と代表の吉津耕一氏は、様々な地域振興事業を手がけています(http://www.tamokaku.com/)。 「月刊たもかく」というタウン誌も刊行していました(2002年に紙版からウェブ版に移行)。この事業も、本を送った人・土地を入手した人・古本を入手したい人が気軽に同地を訪れてくれれば、と「都市と農村との交流」をねらいとしています。

最後に朗報を一つ。雑誌『ヒトハコ』によると、3月に神楽坂でも一箱古本市が開催される予定だそうです。

高橋正樹
『かぐらむら』編集室