第六回 「リトルプレス」って何?

大型書店であれば都内でも全国のタウン誌が手に入ることが多いようです。地域情報中心のものであれば観光ガイドブックなどの近くに、地域の出版社が刊行しているものであれば地方出版コーナーにあります。あるとき雑誌コーナーの一角に「リトルプレス」の棚に気がつきました。そんな個人編集の雑誌の中に「タウン誌」をいくつか見つけました。

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右から『てくり』『kalas』『そらあるき』

まずは、「伝えたい、残したい、盛岡の「ふだん」を綴る本」と謳っている『てくり』(編集発行・まちの編集室、B五判、六百円+税、四八頁)。一七号(二〇一三年八月発行)のテーマは「山は、待ってくれる」。総頁の半分以上を割いて、山登りあれこれ、山小屋、山守人など盛沢山の内容が、カラー写真とともに詰め込まれています。神楽坂のjokogumo(よこぐも)さんが編集発行された「行ってみたいトコロ盛岡」でも紹介されています。

同じくオールカラーで豊富な写真を掲載しているのが『kalas』(発行・カラスブックス、A五判、税込六百円、九二頁)。二〇号(二〇一三年八月発行)のテーマは「囁きの聴き方」。編集者の本拠は三重県の津だそうですが、好奇心と興味次第でどこにでも飛んで行きます、ということで「翼のある小冊子」と謳っています。とはいうものの、地元の人、お店、モノを鮮やかな写真付きで丁寧に紹介しています。肉まんの「井村屋」さんが三重県が本社とは初めて知りました。

先の2つに比べて小ぶりですが、金沢の『そらあるき』(発行・そらあるき編集部、A五判、本体三一五円)も気になります。編集後記をみると金沢内のお店の有志が集まって編集されているようです。観光地としてよく知られている金沢ですが、旧茶屋街や武家屋敷街などに新しいお店がいろいろ出来ているようです。そんなお店を巡れるまちあるきガイドでありながら、人やテーマを掘り下げる記事も目立ちます。金沢と言えば和菓子ですが「金沢 de 和パン」(一四号、二〇一三年二月発行)も気になります。

この三誌に、どこか似た雰囲気を感じました。自分たちの気になるテーマを、自身の地域を拠点にとことん追いかけているからではないでしょうか。観光・生活情報をバランスよく提供するという発想ではなく、あくまでも個々人の気になることやこだわりが出発点のようです。それが結果として、読者が住人や観光客であるかにかかわらず、読み応えのある誌面をつくっているようです。

既存のタウン誌の形式にとらわれないこだわりは、誌名の付け方にもあらわれているようです。由来は各誌を手にとって確かめてみてください。

編集者個人の問題関心にとことんこだわるという点で思い出されるのが、一九八〇年代に誕生した『谷中根津千駄木』です。通称「やねせん」とよばれた同誌も、多くの雑誌・人に影響を与えました。また、タウン誌ではなく自らを「地域雑誌」と銘打っていました。

「やねせん」は休刊してしまいましたが、このようなこだわりの雑誌が全国各地に生まれているかもしれません。

ぜひ、さがしてみてください。

高橋正樹
『かぐらむら』編集室