インテリアでメッセージ 第14回 合理をはなれ遊び心でつくる

若い日、桑沢デザイン研究所でグラフィックやインテリアを共に学んだ同期の友人、坂本和正。三十五年前には、拙宅とアトリエの家具を設計してくれた英才がこの二月に他界した。これまで博物館や教会など、多くの傑作を手掛けてきた坂本が、私の注文にはどのような答えを出してくれたか、そのいくつかの例を写真と共に紹介してみよう。

ウェーブチェアー。重厚なチェアに暖色系と寒色系の2種のデザイン。坂本和正

先ずは三階のアトリエ、私やスタッフの仕事用デスクを窓際にさりげなく設けた後、中心の接客スペースに頃合の大きさのテーブルをデザイン。やがて冒頭の写真に見られる来客用の重厚な一連の椅子をプレゼンテーションしてもらう。堅牢な木の椅子の背と座には無彩色の厚い布地が貼られていた。どんな色を予定しているのかと聞けば、それはサトーが決めることだと言われ唖然とする。結局、色は俺なのかとボヤキながら暖色系と寒色系の二つのトーンでまとめる。やがて完成したものを見て、重厚で鮮やかな椅子になったことを喜び、背に流れる太い曲線は、彼が求める生命のうねりのことと納得する。

二階に下りればリヴィング・スペース。中央に十人は坐って食事できる大きなテーブル。この素材は建て替えで壊した古材を再利用したもの。表面には節目などが、ところどころに見えているが気にしない。また中央部には小さなホゾ穴が二つもあったが、鍋料理用のガス管を通す穴に利用すればいいと納得。四本の古い柱が支える食卓は、俯瞰すれば坂本が意図する生命の曲線にふちどられ、今も家族で愛用してやまない。

リヴィングルームの一角、中央に古材を使ったテーブル、右奥に食器棚

写真の左奥に見える食器棚も彼のデザイン。重厚な割に工夫もこらされ、斜めに造られた奥の引き出しは十五段。スプーンやフォーク、栓抜きなど、長い金属類が収められている。手前の棚は電話台、手の高さに長電話用のいたずら道具まで付いている。遊び心も含めて坂本の造形は様々に発展している様だった。

この階の東面の壁は、アートを飾る壁ではなく、大きなジグソーパズルの壁面にして子供たちにも遊ばせたらとの私の提案に坂本も建築家の丸山も考え込んでしまった。一辺がほゞ三十センチの大きさで厚さ五センチのパズルを一五〇枚ほど作らなければならないからだった。

しかし夢は叶えられるもの。丸山の知人がそれを可能にする仕事を赤城下町でしていたからだ。結局、一辺三十センチ、厚さ五センチのベニヤ板のパズル・ピースが一挙に百数十枚も作成された。この作り方でいけばピースの側面は焼け焦げるが、何ら問題はない。

壁一面に貼られた1辺30センチのジグソーパズル。はずせば様々な絵が現われる

やがて壁一面に埋め込まれた大きなジグソーパズルは、離れて見ればベニヤ板の連続。しかし一枚一枚ピースをはがせば、子供に合った私のカラフルなイラストが現われてきて驚かされるだろう。また一個のピースに一本の脚をつけて立たせ、パズルのように繋げていけば、大きなテーブルも生れる。好みの大きさの脇机にしてお茶するのも楽しいだろう。

ジグソーのテーブル。集まる人の数によってテーブルの形は変えられる

私はパズルの壁の上方に神棚を設けた。父は絵心もあり、かつ神道の熱心な崇拝者でもあったからだ。父にも私の遊び心を理解してもらえるよう、簡素で品格ある神棚のデザインを坂本に依頼、パーツそれぞれの着色は私が施す。坂本のいう宇宙的パワーがここにも降りてくることを祈っている。

ゆー・じー・さとー

1935年神楽坂生まれ。東京学芸大学中退、桑沢デザイン研究所卒業。デザインファーム代表。世界四大ポスタービエンナーレ(ブルノ、ワルシャワ、ラハチ、モスクワ)のいずれでも金賞受賞。著書に「U・G・サトー」ggg Books 36、「富士山うたごよみ」俵万智と共著、「あめかな」、「しまうまのさんぽ」など。いずれも福音館書店。