第一回 女流義太夫とはなにか?

はじめまして。神楽坂に稽古場を構えて七年目に入った女流義太夫の三味線弾きの鶴澤寛也と申します。今回はまず義太夫節のご説明をしようと思います。

義太夫節というのは江戸時代にできた三味線音楽のひとつで、三百年以上前に大阪の竹本義太夫というミュージシャンがその頃流行っていた様々な音楽の面白い部分を取り入れて新ジャンルをつくり、大変な人気を博しました。彼の名前から義太夫節と呼ばれるようになり、語りものの一ジャンルとして現在まで途切れることなく続いています。

大きな特徴としては、大阪生まれの芸能なので大阪弁で語る。三味線は棹の太い「太棹」と呼ばれるものを使用する。などで、三味線音楽の中でも濃い独特の魅力をはなっています。

さて女流義太夫とはなにか、と申しますとその字のごとく、太夫(語り手)も三味線弾きも女性だけの義太夫節です。

文楽(人形浄瑠璃)の太夫・三味線・人形遣いは男性のみで、女性は同じ曲を演奏しますが同じ舞台に立つことは原則的にはありません。

舞台ではこんな姿で演奏させていただいています。


現在東京では約20名ほどが定期的に活動をしており、演奏会のほか、日本舞踊の地方(じかた=伴奏)、八王子車人形や乙女文楽、糸あやつり人形などへの参加、朗読など他ジャンルとのコラボレーション、義太夫教室やカルチャー、大学などの講師、学校巡演などの普及活動、アマチュアの方の稽古など幅広く行っています。

「かぐらむら」にご縁のあるところですと、連載も持たれている神楽坂にお住まいの新内節の人間国宝、鶴賀若狭掾お師匠様と舞台をご一緒させていただくこともあります。

演奏会の最たるものとしましては、所属する(一社)義太夫協会で定例公演を行っており、四月は二十九日(金・祝)十三時より紀尾井小ホールにて開かれます。

先だって松尾スズキによりNHKでドラマ化された「ちかえもん」こと近松門左衛門の作品二つを上演、私は『曽根崎心中』天神森の段をつとめることになっております(「此の世のなごり夜もなごり 死にゆく身をたとふればあだしが原の道の霜 一足ずつに消えて行く夢の夢こそあはれなれ」で始まります)。

また私の主催する『はなやぐらの会』では人間国宝・竹本駒之助お師匠様の胸をおかりして、四月十日(日)十三時よりこちらも紀尾井小ホールにて開催いたします。演目は『加賀見山旧錦絵』長局の段です。

演奏前のお話は作家の橋本治さんで、歌舞伎・文楽にたいへんお詳しく、従来にはないユニークな切り口の解説は大変ファンも多く、今や伝統芸能界にとってもなくてはならない方でいらっしゃいます。昨年出版された『義太夫を聴こう』(河出書房新社)には、私が書いていただいた新作の詞章や、橋本さんと私の対談なども掲載されています。

またその新作「源氏物語 玉鬘」船路の段より長谷寺の段は、五月三十一日(火)十九時よりお江戸日本橋亭にて再演が決まっております。初演と同じく、竹本綾之助師匠、竹本越孝師匠、後輩の鶴澤津賀花さんにご出演いただきます。どうぞ皆様お誘いあわせての賑々しいご来場を心よりお待ち申し上げます。

つるざわ・かんや

1984年、鶴澤寛八に入門。1993年、豊澤雛代の預かり弟子。2007年、鶴澤清介の預かり弟子。2009年、重要無形文化財総合指定保持者認定。伝統芸能ポーラ賞奨励賞ほか受賞多数。京都造形芸術大学非常勤講師。
詳しくは http://tsuruzawakanya.com/