2018年8月 99号

映画の看板絵から昔の映画館の展示まで

長岡ポスターなど紙のものはその後、順番にスキャンしてデジタル化もされたそうですが、面白いのは、看板絵。ちょっとどぎつい色彩ですがすごく躍動感やワクワク感がにじみでて、いい感じですね。ラムラの都橋でずらりと並んだのを覚えていますが、あれは壮観でした。

35周年映画祭看板絵展(ラムラ みやこ橋)

加藤看板絵も面白いですが、昔の映画館建築の中には実に魅力的なデザインのものがあって、これらの写真も集めて駅ビルのラムラで展示したこともありました。40周年の年だったと思いますが。

長岡あれはとても興味深かった。建物そのものに夢がありました。映画というものに対する昔の人たちの夢のようなロマンチックな思いが外観の設計に表れていましたから。加藤さんといえば「フィルム映写機の伝道師」などと新聞記事でずいぶんと喧伝されましたが、それだけじゃない面は案外出てこない。マスコミのステレオタイプ化がちょっと残念です。こうした映画文化の面白いものをたくさん収集しているのに。それにしても成田映画センターのフィルム映写機は、すごい数ですね。

ずらりと並んだ「成田映画センター」のフィルム映写機

加藤最近はいったん(集めるのを)休んでいます。

長岡どのぐらいの数になったのですか?

加藤160台は超えています。

長岡1台200キロ近い鉄の塊が160台も……。なにか集めるということに執念を感じさせますが。

加藤私は映写機の収集家ではなく、35mm映写機の保存と再活用を目的に収集しています。

長岡そうでした。そういえば、映画館の仕事より前に、私は水琴窟の取材で加藤さんとご縁ができたのですが、当時(30年近く前)、まだ水琴窟というものが世間であまり知られていない時に、日本中に残されている水琴窟をすべて探し出して紹介するという、出版界のだれも考えないような出版計画を立てました。その無謀ともいえる計画のおかげで、私は江戸後期から昭和初期までの古い水琴窟をめぐる取材旅行を長い間たのしませてもらいました。いま考えると、とても贅沢な計画でしたが、これも水琴窟の世界を集大成したいという思いが強かったのでは?

加藤1年以上かけたプロジェクトで、面白かったですね。宝探しのようで、日本各地(主に関西方面ですが)から昔の水琴窟が次々と見つかって……。

長岡あの集大成をした本『幻の音風景・水琴窟』が発行された翌年に、たしか岩波の『広辞苑』の改訂六版に水琴窟の言葉が採用されたと思います。今では、あれが水琴窟の教科書となって認知されている。

加藤水琴窟の前にも、いろいろ集大成しようとしたものはあったんですよ。

長岡そうなんですか? 集大成のいわばプロジェクトXはまだ他にもあったんですか?

加藤そのずっと前には『別荘地年鑑』という分厚い豪華本を発行しました。それで日本中の別荘地を集大成しようと試みたんですが。

長岡現在ギンレイホールは、デジタルとアナログのいわば二刀流で上映していますね、通常の上映プログラムはデジタル映写機で、毎月1回(金・土)のオールナイト作品ではフィルム映写機を併用。こうした二刀流の映画館は都内にほかにもあるのですか?

加藤ほとんどの映画館はデジタル映写機に入れ替わりました。最初に言ったように98%ぐらいでしょうか? 昔のフィルム映写機を活用できる新作が作られなくなり、映画の制作も、配給もすべてデジタルでやり取りされる時代に入ったわけです。中には昔のフィルム作品で特集を組んで上映している映画館もあります。例えば、池袋の「新文芸坐」、高田馬場の「早稲田松竹」、神保町の「神保町シアター」などは旧作の特集で知られています。これらのミニシアターや名画座では、いまも映写技師がいてフィルム映写機が活躍しています。

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