2017年12月 95号

ヨーロッパ、本場の味

編集部クリスマスの行事菓子といえば、シュトーレンがあります。

鈴木6丁目のベッカーのシュトーレンは絶品です。ミュンヘンにダルマイヤーという老舗食品店があるんですが、その近くのパン屋さんでベッカーのご主人は修行したと伺いました。

暖かく、香ばしいパンの匂いで満たされたベッカーの店内とご主人の稲葉さん

編集部まさに本場の味ですね。製法もいろいろ研究されていますよね。

鈴木以前、私の息子がドイツに留学していまして、帰国のたびにシュトーレンを買ってきてくれたんです。でもベッカーさんのシュトーレンを知ったら「もう買ってくる必要ないじゃない」って。(笑)

編集部サイエンスカフェでもシュトーレンを出していますね。

鈴木あの時は時間がないのに、無理を承知でお願いしたんです。本当に失礼な話です、シュトーレンを作るのは大変って知っていますから。でも欧州時計塔の旅のお話で、時を刻むお菓子が欲しかったんです。相談した時に、息子の話も聞いていた上で、「わかりました。明日お休みだから、仕込んでやれば間に合うからやりましょう」と言ってくれたんですよ。シュトーレンを介在にして、ダルマイヤーの話とかドイツパンの話とか、もうひとっ飛びに。それが嬉しくてなりませんでした。家族のお菓子として残りましたね。

稲葉さんがお手本にしているシュトーレン(オーストリアの古い本から)

編集部家族のお菓子、受け継がれていくもの。他にそういったものはありますか?

鈴木レ・グルモンディーズのキッシュですね。前に大久保通り沿いにあったフレンチダイニングのお惣菜店です。ご主人のピーターさんは日仏学院(アンスティテュ・フランセ東京)ラ・ブラスリーの元マネージャーさんでした。彼が子どもの頃、週末におばあちゃんの所に行くと出てきたその味が、楽しみだったと。それがピーターさんのキッシュには詰まっていて、季節のキッシュを手作りしています。そして、ここのマカロンは本当にかわいいです。

左/ラスク 300円(ベッカー)、右/サーモンとほうれん草のキッシュ 561円(レ・グルモンディーズ)

編集部味覚が記憶や体験を蘇らせて、何かを共有できる……素晴らしいです。

鈴木そういうことがある町が、私にとっては神楽坂です。お菓子そのものから、自分の中にあるものが掘り出されるわけですよね。だから本当に嬉しいですね。ああ出会いたかった君に、という感じです。

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