2016年4月 85号

坂道、路地、石畳が織りなす街並み、神楽坂はまさにイタリアの小さな街にも多くみられる佇まい。そのせいか近年急速にイタリア料理店が増え、今では100軒を超える勢いだ。この界隈にイタリア料理店が進出する魁になったのは1988年、市ヶ谷にリストランテ「カルミネ」をオープンしたカルミネ・コッツォリーノさんの功績がある。今回紹介する店のオーナーにもカルミネさんの影響を受けたり、厨房で働いた経験を持つシェフもいる。神楽坂にはフランス関連の文化施設もあることからフランス的雰囲気をイメージしたり街中に流される音楽もフランスの曲だったりするが、今や料理店に関してはイタリアがフランスを凌駕している。それは80年代後半から起こったイタリアブームをきっかけにイタリア人気が高まり、青山や西麻布などのメッカからここ数年は神楽坂にも広まってきた。 しかし、神楽坂で成功しているイタリア料理店と他の地域を比べると、神楽坂のイタリア料理店は圧倒的に地元の人々や常連に寄って支えられている。それは今回の取材でも皆さんがそのように語り、感謝を述べていることからも明らか。商いとしてのあるべき姿、それは地元や常連に愛されるからこそ成り立つという基本を極めれば、神楽坂のイタリアンは今後もますます発展していくに違いない。

文・写真/篠 利幸



家でもイタリア料理、作りますよ!

アルベラータ Alberata

今では神楽坂界隈でもカルミネに次ぐ老舗のイタリア料理店「アルベラータ」、オーナーシェフの高師さん(写真上)は浅草界隈で生まれ育ったので、西麻布や青山よりも下町的な佇まいの神楽坂に惹かれた。イタリアでも修行を重ねた後、当初は和の雰囲気が強いのかと想像していたが、来てみると意外にそうでもなくフレンチもあちこちにあった。これならイタリアンでも行けそうだと思い、イタリアで学んだ料理をほぼそのまま提供してみたところ、今日に至るまで受け入れられてきた。高師さんが学んできたイタリア北部のレストランの料理やサービスの雰囲気がこの神楽坂の街の雰囲気にも合うのだろう。エレガントではあるけれど、気取らず、これ見よがしにイタリアであることを主張しない、自然な素材の味わいを楽しませてくれる料理だ。柔らかな外光が入る店内には洗練された落ち着きがあり、この空間、この料理が高師さんの持ち味そのものと言える。家庭でもイタリア料理を作り、楽しむという、根っからのイタリア料理好きであり、家族思いの優しさが店の料理にも反映され、それがまた地元や常連の方々に長く愛されてきた所以であろう。

ランチ…1800円~(平日)2800円~(土・日)
神楽坂3-6 鶴田ビル1F TEL03・5225・3033 
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