2013年12月 71号

「藝術座創立百年委員会」主催の「島村抱月と松井須磨子の藝術座百年」イベントは、2013年10月26日と11月2日の2日間にわたって新宿区の牛込箪笥区民ホールで開催されました。
今から100年前に島村抱月らによって創立された藝術座を顕彰し、その現代における意義を再評価し、その再認識の灯を次世代に伝えていこうと行われたものです。 文:木村敦夫(東京藝術大学非常勤講師/藝術座創立百年委員会副会長)
撮影:青柳裕久

10月26日 第一部「藝術座の唄をめぐって」

開会の言葉をのべる岩町功会長

 10月26日はその第一部「藝術座の唄をめぐって」が催されました。当委員会の岩町功会長、共催・新宿区の中山弘子区長の挨拶に続いて、かつて松井須磨子役を演じた女優の栗原小巻さんが登壇しました。小巻さんは、須磨子の生涯にふれつつ、与謝野晶子の反戦歌『君死にたまふことなかれ』を朗読しました。日露戦争時にこの歌を詠んだ晶子と、それから10年ほどの時を経てまばゆく光り輝く星として登場し、女性の地位向上を身を以って主張し続けた須磨子は、紛れもなく同じ空気を呼吸していた女性なのだということを強く感じさせてくれました。

女優の栗原小巻さん

 次に登壇したのは邦楽研究家の関川勝夫さんです。関川さんは、SPレコードを手巻き式蓄音機で聞かせてくれました。須磨子の生の歌声、台詞読みだけでなく、講義の名手だった坪内逍遥の肉声による歌舞伎台本の朗読まで聞けたことは、得がたい体験でした。

手巻き式蓄音機

蓄音機の説明をする関川勝夫氏

 休憩後に登壇した永嶺重敏さんは、『復活』劇の挿入歌『カチューシャの唄』の戦略的なすばらしさを明らかにし、それがどのようにして日本中で口ずさまれるようになり、『復活』劇の人気の後押しをしたかを分析しました。『カチューシャの唄』こそは藝術座の劇中歌戦略の原点だったのです。

永嶺重敏氏

 第一部の最後に登壇した相沢直樹さんは、ロシアの作家ツルゲーネフの原作と比較しつつ、機智にあふれる語り口で『その前夜』劇を立体的に再現しました。相沢さんの講演の中で『その前夜』劇の劇中歌『ゴンドラの唄』や『復活』劇の劇中歌『カチューシャの唄』などの藝術座ゆかりの歌を披露してくれたのは、ソプラノ歌手の飯島香織さんとピアノ奏者の中畠由美子さんです。飯島さんの巧みな指導のもと300人ほどの観客が中畠さんのピアノ伴奏で藝術座の唄を大合唱して第一部は幕となりました。

相沢直樹氏

飯島香織さん

ソプラノ歌手の飯島香織さんとピアノの中畠由美子さん

観客の皆さんも一緒に熱唱

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