2012年12月にオープンしたアトリエ灯は、和ろうそく屋さんである。店主の中村知子さんは、もともとは古民家再生のためのボランティア活動をしていた。その活動の中で、飛騨古川にある古民家の和ろうそく屋さんを偶然訪れたことがきっかけで、中村さんは和ろうそくに魅了されることになった。今や和ろうそくと聞いてもピンとくる人は少ないかもしれない。代々続く職人も全国で10人いるかいないかという規模にまで落ち込んでいるようだ。また、和ろうそくの制作は手仕事で、素材も植物性であるため、キャンドルと比べてコストが数倍以上かかってしまう。それでも誰かが広めなければ、日本の貴重な文化がまた一つ、途絶えてしまう。そう思い知った中村さんは、まずは和ろうそくの実物を見てもらうために、その素朴な温かみと気品を実感してもらうために、アトリエ灯をオープンさせた。アトリエ灯では現在、京都の中村ろうそくを始め、滋賀、石川、山形、新潟など全国各地の和ろうそくを取り扱っている。
日々の暮らしの中にもう少し、火というものを眺める機会を増やしてもいいのではないか。キャンドルよりもゆらぎのある、和ろうそくの灯りが生活に加われば、ふっと心休まる時間も増えるだろう。(石丸)